第305回 幸せな時間

投稿日:2017年5月22日

先日、2名の全身転移の患者さんのセカンドオピニオンを受けました。

相談の電話があった時に、「お役に立てそうにない」とどちらもお断りしたのですが、「どうしても先生に逢いたい」という強い希望をお持ちでしたので、面会することにしました。

 

1人目の患者さんは、ご本人と2人のお子さんでいらっしゃいました。

それぞれに病気や現状の理解を聞き取り、陽子線治療を知った理由なども聞きました。
その上で陽子線治療と他の治療の特徴、向き不向きなどをお話ししました。

今回の場合、ある臓器の移植を経験されていた為、免疫療法は適応となりません。
他の治療法も模索しましたが、本人のことを考えると「何もしないこと」が最も良いと感じました。

そして、3人に対して
「何もしないことが最も良いと思います。
 ただ、『何もできることがない』とふさぎ込むのではなく、一日一日を楽しむように心がけてください」とアドバイスしました。

手の施しようがない がん患者であっても、そのように生きる方法があることを知ったのでしょうか。
3人とも吹っ切れたような晴れやかな表情になられたので、私の思いが伝わったと嬉しく思いました。

 

 

翌日、2人目の患者さんと面会しました。

奥様の相談にご主人だけで来られ、状況をお話しされました。
患者さん本人はあまり病状を知らないようですが、元気に自宅で日常生活を送っているようです。

ただ、ご主人が「何か良い治療はないものか」と一生懸命でした。

よくよく話を聞いてから、全身の転移を治す医療はないこと、現状は上手くコントロールされているので、それを継続することをアドバイスしました。

「治すのではなく、悪くしない治療だ」と話すと、暗かった表情も少しずつ柔らかくなり、何とか私の意見を理解していただけたようです。

今回の患者さんはどちらも、現在の医療で根治を期待することは難しい全身転移です。

スマホで検索したら、あらゆる情報が手に入る時代ですので、本人やご家族も治療が難しいことは分かっていることでしょう。
それでも、現実として受け入れる心の準備が出来ておらず、漠然とした不安から逃れる為にもがいているのです。

もがき苦しむのではなく、それらを理解し、整理した上で受け入れる。
そうして残された時間を家族や親しい友人たちと囲まれた幸せな時間に使って欲しいと思っています。

残された時間は、感謝を伝えあったり、昔話を懐かしんだり、笑顔で過ごしていきたいですね。

 

引き続き、「幸せな医療の提供」の一環として、がん治療に際しての正しい考え方を多くの人に伝えていきたいと思っています。

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