第302回 幸せに生きるがん患者さん

投稿日:2017年5月1日

今回は、高齢の女性のお話です。

彼女は20年ほど前に腹部臓器の手術を受け、続いて術後に放射線の照射と抗がん剤の治療を受けました。
その後、小さな肺転移も見つかり、3回の手術を受けます。

それから順調に10年が経過し、お腹の中の別のがんを手術。
2年後の肺転移も手術。
最初のがんの治療から12年後には、切除部分に再発が見つかり大手術を受けました。

その大手術後、肺転移が認められ抗がん剤治療を受けましたが、2個の腫瘍だけは消えませんでした。
最初の治療から、20年目のことです。

 


 

ある地方で講演した際、地方新聞に私の講演に関する記事が出ました。
彼女はその記事を発見し、「陽子線治療で治療ができないだろうか」と主治医に相談したそうです。

親切な主治医から、「一度相談してみては?」と後押しされ、私とテレビ電話システムでの相談となりました。
事前にキャンサーボードで資料を検討しており、「治療可能です」と返答したところ、ご本人は「嬉しい!嬉しい!!」と2人の友人と大喜びでした。

 

私の経験で、これ程長い病状の患者さんを診たことはありません。
彼女はとても穏やかで、日常生活を楽しんでいる様子です。

治療期間中は、隣接するホテルで友人2人との生活を楽しんでおられ、時々すれ違うと、ニッコリと笑顔で挨拶をして下さいます。
20年間がんと共に歩んで来られた苦労を全く感じさせない様子は、本当に素敵です。

この女性は、まさに「幸せに生きるがん患者さん」です。
「幸せな医療の提供」を掲げ続けきましたが、目の前にそれを体現している女性がいることを、嬉しく思いました。 

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