第78回 肩の力を抜き、いい加減にする

投稿日:2020年10月19日

  先日、温熱療法を導入した施設から、1名の医師が見学にいらっしゃいました。

 

過去にも、色々な施設の方が見学に来られましたが、医師が1人で見学に来たのは初めてです。

まじめな先生で、「頑張って温熱療法を始めるぞ!」と言う気持ちがひしひしと伝わってきます。

 

 

私のような長年の放射線治療医は、「装置を使った治療」は「チームで行う医療」であることを肝に銘じており、チーム全体のバランスを考えて治療を行なっています。

装置を動かすのは医師ではないことを理解し、全体を見るようにしています。

 

今回見学にいらっしゃった先生は、お会いした時から、すごく頑張る気持ちが伝わってきましたが、それは「全てを自分中心で頑張る!」という気持ちであると感じました。

 

そこで、「少し肩の力を抜きましょう」とアドバイスしました。

そして私の仕事は「いい加減ですよ」と続けました。

 

 

「いい加減」と聞くと「きっちりしていない」と誤解されがちですが、語源は仏教の本などに出てくる言葉です。

お風呂に浸かっている時のお湯が「良い加減」と云えば、その本来の意味が理解していただけると思います。

 

完治の期待できないStage4の患者さんが多い温熱療法において、厳格な適応で患者さんを選り分けると、治療に適応とならなかった患者さんは、必ずと言っていいほど怒り、場合によってはクレーマーとなってしまいます。

「いい加減に」患者さんを選び、ある期間治療をして継続するかどうかを決めるほうが医師も患者さんも納得できます。

 

これは、他の厳格な適応を定める治療法(手術や放射線治療、粒子線治療など)とは大きく異なります。

しかし、患者さんの納得度と幸せを考えると、このいい加減さが必要であると考えます。

 

今まで、厳格な適応を定めていた粒子線治療を行ってきた私だからこそ、その気持ちを誰よりも理解できると感じています。

これからも、誰もが納得できる、優しく幸せな医療を提供していきたいと思っています。

 

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