第60回 老老介護と陽子線治療
投稿日:2019年11月18日
数年前の話です。
高齢の女性が相談のため、当時センター長をしていた、メディポリス国際陽子線治療センターに来ました。
相談の内容は「お腹の中にできたがんを陽子線で治したい」というもの。
持参された資料に目を通すと、難しい手術にはなりそうでしたが、手術で根治が期待できる悪性腫瘍でした。
お住まいが東京ということもあり、良い病院(手術の上手な病院)もたくさんあるので、「手術で根治を目指してはどうでしょうか?」と手術を勧めました。
しかし「どうしても陽子線治療を受けたい」と言って引かないので、陽子線治療を希望する理由も含めもう少し深くまで話を聞きました。
すると、10年前から自宅でご主人の介護をしているということがわかりました。
もし手術を受け、体力がなくなってしまったら、ご主人の介護ができなくなってしまうので、「身体に優しい陽子線治療を受けたい」という強い希望を持たれていました。
指宿での治療期間は、約1月半かかります。
その間、ご主人の介護はどうするのかを聞いたところ、「短期間なので、複数の子供たちで介護を頑張ります」とのこと。
それならば、指宿に来てもらうことが可能だと判断し、治療させていただくこととなりました。
それから数年が経ちますが、本人も変わらずお元気で、ご主人の介護も献身的に続けられているそうです。
時代は大きく変わってきています。
過去には想像できなかった、「老老介護」や「シングルマザー」が当たり前の時代となりました。
そんな時代に、介護をしている人やシングルマザーががんになった時…
従来の治療では家族との生活を続けることが困難になる場合も考えられます。
陽子線治療のような新しい治療は、体に優しい治療の特徴を生かして、手術を受け入れることのできない人にも対応していかなくてはならないと感じています。
そこは、従来の手術や放射線治療と比べて、効果があるとかないとかの話ではありません。
また、従来の治療では困難であった膵がんに代表される難治がんにも積極的に対応していくべきだと考えています。
その場合、難治がん治療の主体は、そのがん治療を行っている専門病院となります。
「化学療法を中心とした集学的治療に陽子線治療を一時期利用する」という考え方です。
各地の病院を訪問して気がついたことは、「地域の病院同士の連携や、地域の病院とそれらの病院が行えない治療を行っている医療施設(メディポリス国際陽子線治療センターなど)との連携」がもの凄い勢いで進んでいるということです。
一昔前の我が国は、病院間の連携が悪く、患者さんの利益が後回しになっていました。しかし、医療の最前線は変わってきています。
患者さんの声が現実になってきているのです。
メディポリス国際陽子線治療センターには、引き続き「幸せな医療の提供」を行ってもらいます。