第34回 治療をしない例
投稿日:2018年11月5日
台風の日に、遠方から患者さんのご主人とご子息が相談に来ました。
患者さん本人は、50代で腹部のがんになり化学療法を経験していました。そして、相談に来る数日前に急に激しい腹部痛で緊急入院をして、緊急手術を受けたそうです。
完治を目的とした手術ではなく、腫瘍を全て取りきらず手術を終えたため、この残った腫瘍に対して陽子線治療ができないかと言う相談でした。
このような場合、治療ができる場合もありますし、できない場合もあります。
現在の状況や、いままでの治療などの資料にじっくり目を通させていただき、ご家族からも色々と話を聞きました。
それから、陽子線治療でのメリット、デメリットをお話しし、
今回の場合はデメリットの結果、命を奪ってしまう可能性があるため、家族が協力して、残りの時間を自宅で楽しく過ごすようにすることを勧めました。
ご主人も50代なので、なかなか私の説明を受け入れられないようでしたが、過去の例を挙げて、丁寧に説明をして、最後には私の想いを理解していただきました。
第14回 何もしない治療
https://hishikawa-yoshio.com/blog/14_do-nothing/
ご子息に「親孝行をしてあげてください」と言って、私の診察は終わりました。
次の相談は、80代の女性の患者さんとご子息です。
この日も台風の日でした。
首にできたがんは手術で治っているのですが、両方の肺にたくさんの転移がありました。
2人と話をすると、患者さんは、何もしないで良いと考えているのですが、ご子息が一生懸命なので、相談に来たという事でした。
ご子息は、インターネットなどを調べて、病気のことを良く勉強していました。
ただし、多発の肺転移の治療は、年齢から考えると化学療法も放射線治療も陽子線治療も向いていません。
そこで、それらの治療が今の状況に向いていないことを、時間をかけて説明しました。
そして最後には、「なにもしない治療」が良いことをご子息も理解されましたので、診察を終了にしました。
がん治療の進行例においての治療は、応用問題です。
私が若いときは、進行例に対してどのように対応して良いか、あまり分かりませんでしたが、ようやくわかる年齢になりました。
まだまだ日々勉強です。