第21回 日々進化

投稿日:2018年4月30日

70歳前の寡黙な患者さん。

彼は身なりや汚れた衣服も気にしないタイプです。

 

約8週間の治療を予定しており、治療が進んできたころ、この患者さんの治療後、治療室や着替え室で消臭剤を使用していることを担当の看護師から聞きました。

ひどい時は、診察後の診察室でも消臭剤を使用していました。

 

理由はお分かりの通り、患者さんの体臭です。

 

私は鼻が悪く、昔からにおいに鈍感で、この深刻な状況に気がつきませんでした。

そこで、次の診察時に「風呂に入っているか」を聞いたところ、「長い間入っていない」という返事でした。

お風呂に入ることを勧めましたが、長年の習慣で、なかなか入ろうとしません。

 

結局、治療終了までにおびただしい量の消臭剤を使用しました。

 

 

それから数ヶ月して、同じようなタイプの患者さんが来ました。

(年齢は70歳を少し超えていました)

 

病気も同じで、治療期間も同じです。

最初の診察で同じタイプと感じたので、「週に何回、お風呂に入っていますか」と質問したところ、「ほとんど入っていない」という返事でした。

 

そこで、「治療期間中にお願いしたい仕事がある」と前置いて、「治療期間中その仕事をしてくれますか」と聞いたところ、快諾していただけました。

 

そこで満を辞して「仕事はお風呂に入ること」と伝えました。

 

患者さんに「これは駄目です」「必ずこれをしなさい」と言っても、頑固な人は、なかなか従ってくれません。

しかし、仕事となれば、違います。

 

週初めの診察のたびに、先週のお風呂に入った回数を聞きました。

最初は ”仕事として” 週に1回入ってくれていました。

 

しばらくすると、患者さんが「お風呂に入ると気持ちが良いですね」と言ってきました。

その返事を聞いて、「先週は、仕事が1回できている。今週は2回に増やしましょう」とアドバイスしました。

 

2回の仕事もすんなりと受け入れてくださいました。

2回の次は3回ですが、なかなか3回は入ってくれませんでした。

 

どうしてかと思い、よく話をすると、銭湯代が高額で回数を増やせなかったことが理由だとわかりました。

 

結局、この患者さんは、治療期間中に週1~2回の入浴でした。

消臭剤は使用せず、治療終了時には、仕事でなくともお風呂に入るようになりました。

 

これは、過去の経験を生かし、我々の対応を変化させた一例です。

 

この歳になっても、私の診療は日々進化しています。 

 

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