第14回 何もしない治療

投稿日:2018年1月22日

今日は、十数年前に、抗がん剤と外科手術を併用し治癒された女性の話です。

 

手術から数年が経ったある日の検診で、転移が発見された為、抗がん剤による治療を再開されました。

治療が進むにつれ、抗がん剤の効きも悪くなり、主治医の先生から「もってあと1年…」と告げられたそうです。

 

そこで、この女性の娘さんが、「どうしたら良いのか」と私の意見を聞きに来られました。

 

この患者さん(お母さん)は、超高齢でした。

また、がん自体に抗がん剤への耐性ができてきた為、 抗がん剤も効かなくなっているようです。

 

私は、今までの経験から「何もしないこと」を勧めました。

 

このアドバイスを聞いて、この女性は大変驚いた様子でした。

がん治療を専門にしている医師が、治療をしないことを勧めるとは思っていなかったようです。

 

私は、放射線治療を専門にすると決めた数十年前に、先輩の医師から「何もしない」ことも治療の一つであることを教えられました。

そして、「何もしない治療」を患者さんに勧めることは、とても勇気がいることだと言われました。

 

 

この治療相談は、2010年のお話です。

 

アドバイスから1年後の2011年夏、患者さんの肺に水がたまるようになっていましたが、対処療法として水を抜いてもらうことで大事には至っていませんでした。

この時、主治医からは「お正月を越すのは無理かもしれません」と言われたそうです。

しかし、諦めることなく 水がたまる度に対処療法を続けていくうちに、水が増えなくなり、日常生活を送れるようになりました。

 

そうして、主治医から難しいと言われていた2012年のお正月も迎えることができました。

 

その年、「最後の親孝行、最後の旅行」ということで、お二人で大好きなハワイへ行かれました。

帰国後に受けた検査で、それまで高かった腫瘍マーカーが下がっていたそうです。

その報告を聞き私も驚きました。

 

2018年の現在、90歳を超えていますが、介護ホームでお元気にされています。

 

この患者さんの特徴をまとめてみました。

1.超高齢

2.性格が明るく、素直

3.超高齢者だが、おしゃれを楽しんでいる

4.人との会話を楽しんでいる

5.家族を愛し、家族からも愛されている

6.家族に対して感謝の気持ちを忘れず、しっかりと伝えている

 

 

何もしないことは、がんと共存すること。

がんが悪さをしなければ、予想をはるかに超えて共存することが出来ます。

 

その為には、この女性のように、明るく、日々の生活を楽しむことが大切です。

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