第26回 私の大切な仕事

投稿日:2018年7月9日

先日、女性患者さんとご子息が、セカンドオピニオンの為に京都から私の元に会いに来ました。

まずいつも通りご本人とご家族の確認をしてから、私の名前を伝え、挨拶しました。

 

事前に送付されていた資料に目を通して、この方の場合、手術がベストであると考えていましたが、診療情報提供書に「放射線治療のセカンドオピニオンを希望」と書かれていましたので、相談に来た経緯をゆっくりと伺いました。

 

その中で、以前、指宿で陽子線治療をうけた患者さんから「私は陽子線治療でがんが治った。安易に手術をしない方が良いのでは」とアドバイスされたため、セカンドオピニオンを求めて会いに来たことがわかりました。

 

それから、ご本人に、現在の病気・病状について質問しましたが、非常に良く理解されていました。

 

次に主治医から治療方法をどのように説明されており、ご本人としてはどうしたいのかを聞きました。

主治医からは「このがんの場合、年齢から考えても手術が一番良い」と説明されており、いくつかある手術法の説明も受けていました。

 

ご本人としては、それらの手術法の中でも、最も確実なもので手術をする気持ちをお持ちでした。

ただ、知人からアドバイスを受けたので、後悔しないようにとわざわざ相談に来られたそうです。

 

 

放射線治療について、私から詳細に説明を受けるものだと、ご本人とご子息は思っていたようですが、私が開口一番

 

「手術がベストですよ」

 

とお伝えしたことで、少し戸惑っていたように見受けられました。

 

放射線治療の専門家から、「手術がベスト」と言う言葉を聞くとは思いもよらなかったようです。

 

続いて、これからのことをお話ししました。

その中で、今回の状態では放射線治療よりも、間違いなく手術の方が優れていることを強調してお伝えして、詳細な放射線治療の説明は行わずセカンドオピニオンを終えました。

 

全ての説明が終わって、ご本人の「おおきにどすえ」と言う言葉とご子息の「今日は母の背中を押していただいて本当に良かった」と言う言葉。

これらを聞いて、お役に立てたことを実感し、嬉しく思いました。

 

 

同じ「がん」という病気でも、部位や病名、がんの種類、年齢、患者さんの置かれている状況など、それぞれの立場によって、治療の第一選択は異なります。

 

「後悔しないように」お話を聞きに来た今回の場合、非常に良い選択をされたと思います。

 

 

皆さんにいつも伝えている最も大切なことは、思考を止めずに考えることです。

 

 

わからないことは専門家に聞き、多角的に現実を捉えること。

 

人の意見を素直に聞いて、信頼できる人(ご家族など)と相談して、治療方法を自分自身で決定すること。

 

決定したら、その選択が最良の選択であると自信を持つこと。

 

治る気持ちを強く持って、主治医の先生を信じて治療を受けること。

 

 

周知の通り、私は放射線治療の専門医です。

放射線治療の専門医は、放射線の治療ばかりを勧めるのではないかと思われがちですが、そんなことはありません。

 

多くの専門医は、患者さんにとって最良の治療が何かを考え、その中で自分たちが協力できることを示します。

必要があれば、そこから別の専門医を紹介することもあるでしょうし、今回のように患者さんの意思決定の後押しをすることもあります。

 

 

仕事柄、藁をもすがる思いで会いに来てくださる方も少なくありません。

放射線治療の適応とはならないかもしれませんが、会えて良かったと思っていただけるよう、私の40年以上の臨床経験を惜しみなくお伝えしています。

 

私の経験を伝えることも、私の大切な仕事です。

関連記事